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レビュー:「建築家 安藤忠雄」

建築家の安藤忠雄が半生を綴った自叙伝「建築家 安藤忠雄」を読む。


安藤忠雄は「創職男子」だった!
それも、今より50年も早くに。

【安藤忠雄、建築家としての人生のスタート】

「1941年生まれ。独学で建築を学び1969年、安藤忠雄建築研究所設立・・・」

プロボクサーを目指す事を諦めた後、図面の引き方もろくに学ばないうちに友人からバーの設計の仕事を任された彼は、建築の本と睨みあいながらなんとか設計図を引き、一作目を完成させた。
そこから建築家・安藤忠雄としての道が始まる。
大学にも行けず、導いてくれる師も、相談できる同輩もいない中、一人書物と格闘し、ル・コルビジェの図面をなぞり、アルバイトを続けながら少しずつ建築の仕事を自分のものにしていった。

本文中で安藤自身が述べる
「仕事は与えられるものではなく、創るもの」という言葉。
今から50年も前、20歳だった若者が、上記の強いポリシーを持ち、孤独の中にも地道な勉強を怠らず、誰も行った事のないヨーロッパに一人で飛び込み、手探りながらも腕一本で「住吉の長屋」から表参道ヒルズまで、一つ一つの作品を産み出してきた事は感慨深い。
日本の現代建築史もまだ産声を上げたばかりの、何もかもが未開だった時代、情報もリソースもネットワークもない中での「創職」は只ならぬ苦労だったに違いない。だからこそ、この時代の消費主義的風潮や、暮らしを無視した都市の乱開発に流される事なく、苦しさの中、時代とは一線を画す彼独自の建築観が練り上げられてきたのだろう。

【反逆者の住居哲学】

そのような、既存のものに反逆し、逆境を越えてきた彼自身の人生を体現するかのように、彼の「住居」哲学には、ただ快適で利便性を追求するだけではない、一筋縄ではゆかない厳しさが内包される。

「住まうとは、時に厳しいものだ」。

安易な便利さではなく、そこでしか営めない「生活」を問う住まい。生活の中に入り込む自然をその厳しさと共に受け止め、日々の生活の彩とする住まい。そんな住居を創りたい。
賛否両論を呼んだ「住吉の長屋」に始まる、一つひとつの住宅作品には、そんなポリシーを背負った安藤の、高度成長期の物質依存社会への挑戦のまなざしが一貫して透けて見える。

彼自身の住居哲学を理解するうち、ふと私が思い出したのは、3年前、世界一周中に訪れた、モロッコのサハラ砂漠に住む人々の生活だった。

【モロッコ、サハラ砂漠の暮らし】

モロッコ南部の砂漠地帯に、メルズーガという小さな村がある。

そこで、日本人のノリコさんが運営するホステル「ワイルダネスロッジ」に宿泊した。

わずか2~30戸の本当に小さな村だ。

村の西側には砂漠が広がり、地平線まで、草木一本生えない砂丘が延々と続いている。
村の家はみな、石造りの長方形の建物なのだが、ノリコさんのホステルは、砂漠に面した側に壁がない。
要するに家の片側がみんな開いていて、外から家の中が丸見えなのだ。
壁が無くては、砂漠の砂が入り込んでさぞかし掃除が大変なのではないかと思ったが、なるほど、昼間は東からしか風が吹かない。風はすべて砂漠に向かって吹く。
そのためこの村の建物の戸口や窓は、全部西を向き、代わりに建物の東側は高い壁で囲まれ、防砂林のヤシが緑々と繁っている。

それでも入り込んでくる細かな砂を、ノリコさんは毎日箒で掻き出す。
棚、絨毯、ソファ・・・家具のすべてを、さらさらとした砂がまるで被膜のようにしつこく覆う。風の当たる場所で寝ていると、薄力粉をふるわれたように、肌が砂で白く染まる。

灼熱の昼間、人々は石造りの堅牢な建物の中で暑さを避けている。日が沈みきり、涼しさが夜の闇と共に空から落ちてくると、安心して屋外に出て騒ぎ出す。まるで一日の始まりは日没からだと言うように。

夜は皆、ホステルの屋上にマットレスを敷いて寝る。
窓なしの寝苦しい部屋を借りるには一泊80DHかかるが、屋上だと15DHで済む。
使用人も客も猫も、同じように寝転がり、夜空を眺めながら一日の終わりを労っている。

砂漠の星空はみっしりと濃い。
天の川から溢れ出た大粒の星星が、所狭しと濃紺の帳を埋め尽くし、互いに身をぶつけ、砕け散る破片が螺旋を描いては、ダイヤモンドの鋭さで瞳を直撃する。

モロッコ人の使用人から酒と、怪しげな葉巻が回ってきて、そのうち視界も回り出す。
星の光以外に灯りは何もない中、宴は遅くまで続く。


ここでは暮らしがぴたりと風土に寄り添っている。

暮らしに寄り添う家もまた、風土に溶け込んでいる。

家も人も砂漠の一部だ。

ひとびとは自然の厳しさと、長年の連れ合いのように親しく暮らす。家はそれを受け止める器のようだ。

【「旅」が創った建築家】

安藤は、まだ20代の建築家の走りだった頃から既に、時に過酷ですらある「暮らし」に寄り添う住居を建築したいという思いを持つに至っていた。
それはきっと、若い頃から世界中を旅して歩いた経験―遥か彼方の、日本とは異なる文化と風土の中、それに合わせて多様な様相を示す建築物の数々を実際に自身の目で見て歩いた結果だろう。

本書の最後、彼は

「建築のプロセスには必ず光と影があるように、人生にも必ず光の側面と苦しい影の側面がある。(中略)人生に「光」を求めるなら、まず目の前の苦しい現実という「影」をしっかりと見据え、それを乗り越えるべく、勇気を持って進んでいくことだ。」

と締めている。

彼の作品に体現される哲学、そして建築家・安藤忠雄としての人生は、異国の地、そしてそこに住まう人々が織りなす暮らしの、有形無形の光と影を踏みしめ歩いた足の裏から創られたのかもしれない。
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About me

小野美由紀

Author:小野美由紀
こちらにブログ移行しました→http://onomiyuki.com/

慶應大学仏文学科2010卒。
学生時代は「深夜特急」に憧れ世界一周22カ国等海外でフラフラ。一番の思い出はスペイン巡礼。
NPOカタリバ学生職員、道塾を経、現在はフリーライター。
「まれびとハウス」でのんびり料理する日々。
WEBサイトのライティングや仏語翻訳も請負います。
いつか巡礼について読み物を書きたいと思っています。

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