フランス人のエリザ。職業は、不明。ここで働いているWWOOFerたちは、大多数が23、4歳から30歳までの若者だ。
中には46歳というツワモノもいる。
国籍はフランスが大半だが、温かい気候と食事を求めて、イギリスからの来訪者も多い。
WWOOFはフランスの若者たちにとって、余暇の過ごし方としてだんだんと一般的化しているらしい。
なぜなら、フランスも現在、他のヨーロッパ諸国と違わず、大不況の真っ只中で、
若者の失業率は、思わず眼を見張るほどの高さだからだ。
失業率の話題になると、必ず
「政府の発表では14%って言ってるけど、実際の調査では28%なんだ。政府は隠してるだけだ」
「いや、俺は40%だと思う」
と、あやふやな数字が口から飛び出し、失業問題について、喧々囂々、議論が始まる。
事の真偽は分からないが、この小さな農家に集まってくる若者の大半が現在定職についていないことを
考えると、40%という数字にも説得力を感じてしまう。
僕達、失業中です。(一人はイギリス人)だが。
彼らの態度を見ていると、いずれも悲観的な態度はゼロ。
気が抜けるほどお気楽だ。
農場の共同経営者のバスチャン。彼は4年前、この農場の経営を仲間と始めた第一人者だ。
「パリで2年働いたけど、あそこは人が働く場所じゃない。
確かに俺たちは金はないよ。けど、それがなんの問題なんだ?
あんな狭い街にぎゅうぎゅうに詰め込まれて、みじめったらしく働くぐらいなら、職がないほうがマシさ!」
こんなに美味しい食事にありつけて、朝は6時に起き、夜は10時に寝る。
大自然の中で一日を過ごし、仲間たちと毎晩酒を飲みながら語り合う事ができるのなら、
失業率の数字なんて、人生の中でなんの意味も持たないものなのかもしれない。
WWOOFerたちにとっては、ここは人生の途中にぽっかり空いた「失業期」という穴に、
上手いことハマる楽園なのだ。
そして、楽園を楽園たらしめているのは、フランス人の、常に楽観的な、人生に対する見方のおかげである。
スペインの言葉で、
「pan con hamon y vino,eres todos」(パンとハムとワイン、それだけで十分さ!)
というのがある。
同じように、ここの暮らしも、それだけで十分、なのかもしれない。
(じゃがいものグラタンと、あたたかいミネストローネ、そして、ワイン!)